閉鎖空間のSNS以外で、読書メインのやっつけブログを2010年開設→12日間で無残にも放置→2011年311から3ヶ月を契機に「原発事故考察」の為に復活。 読了日記は自分の備忘録の為、ネタバレ満載ご容赦!


by akane-kmj
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著者:村上春樹
ISBN4-06-263086-9 講談社文庫 む 6 ¥514
1995年10月第1刷、2007年12月3日第43刷発行版
1992年10月講談社刊行本の文庫化
村上春樹なのでという理由のみで、☆☆☆☆
   

私と同じ年に生まれた主人公、「僕」。
まだ一人っ子が珍しかった時代に、一人っ子として育ち、
同じく一人っ子で脚の悪い女の子「島本さん」と、
互いに「特別な存在」として交友を持った12歳の頃。
歩き方の特徴から、また、大人になって手術によってよくなっていることから推測すると、
「島本さん」の脚は、多分、私と同じ亜脱性の股関節症。
生まれ年と障害を抱えた脚と、この二つが自分と符合していることが、
全く個人的なことだが、私には興味深かった。

メインのBGMは
060.gif『プリテンド』ナット・キング・コール
060.gif『スタークロスト・ラヴァーズ』
(悪い星のもとに生まれた恋人達;薄倖の恋人達=ロミオとジュリエット)
オンタリオ シェイクスピア・フェス用に1957年;デューク・エリントン、ビリー・ストレイホーン作
オリジナル演奏 アルトサックス:ジョニー・ホッジス、テナーサックス:ポール・ゴンザルヴェス




以下、ネタバレを嫌う方は読むのをお控えください。




やがて、子どもがいつでもそうであるように、親である大人の生活やら、
小学校卒業という環境の変化の中で、「僕」と「島本さん」とは、当然のように別離。

「僕」は当たり前の中学生になり、当たり前の高校生になり
温かさと生真面目さで「僕」を半ば癒すように寄り添ってくれた
普通の女の子「イズミ」と、1年ほど、高校生にありがちな交際をする。
大学進学を前に、「僕」の中のどうにもならない「欠落」のせいで
イズミを損ない、自分を損ない、別離。

決定的な「何か」を求めていることにさえ気づかぬまま、
当たり前の大学生活・当たり前の無難なサラリーマン生活の中で、
ひたすら「孤独」であり続ける、欠落を抱えた「僕」。

蝉のような7年間を経て、
(そういえば、この「7年」は、蝉が羽化するのをじっと待つような、
村上春樹はそのような意味を持たせたのかもしれない)
通り雨のおかげで一人の女性と知り合い、結婚。
女性の親が実業家だったおかげで、サラリーマン生活に終止符を打ち、
自分でも思わぬ才覚を発揮して、小洒落た飲食店のオーナーとしてそれなりに成功。
「僕」の人生の成功(と呼べるもの)は、だいたいが、このような「おかげ」で成り立っている、
というのは、いつもの春樹作品同様。

こうして、12歳から25年後には、「僕」は、ある程度成功した人生を歩み、
一人っ子ではない二人の、男の子ではなく女の子の、父となって、
幸福な「家庭」を持っている。
だが「欠落」は依然として欠落したまま。

そこへあるきっかけで現れた、もう12歳ではない「島本さん」。
主人公「僕」の「欠落」を埋めることができるただ一人の特別な存在である「島本さん」との邂逅は
「僕」に、失ってはいけなかったものを、はっきりと思い出させた。

ナット・キング・コールの歌う「国境の南」には何があるのか、
そこには何か、とても綺麗で、柔らかくて、大きなものがあるのかと思っていた12歳の頃。
だが、大人になった「僕」も島本さん」も、それがただメキシコのことだと知っている。

突然何かに憑かれたように、「太陽の西」に向かって飲まず食わずで歩き続けて
やがてパッタリと倒れて死んでしまうという、
シベリアの農夫がかかる病気:ヒステリア・シベリアナに、
彼もまた襲われるのか・・・・・
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by akane-kmj | 2010-01-01 20:20 | 読了:文芸その他